消費財向け販売管理の現状と、今だから取り組むべき3つのこと

ご存じの通り新型コロナウィルス感染症の拡大と消費マインドは、企業に大きな影響を与えています。

飲食業界や旅行業界は大打撃を受けている一方、食品系や医療品系の量販店小売業は売上を伸ばしていて、コロナ特需とも呼ばれています。今回のブログのテーマである消費財卸売業に目を向けると、自社の得意先の業種割合により業績は大きく異なっています。食品系の量販店小売業をメインとしている企業は大きく業績を伸ばされていますし、飲食業界をメインとしている場合は苦しんでおられます。また同一企業内でも部署毎に取引している業種により業績は大きく差が出ています。

この新型コロナウィルス感染症は私たちの取り巻く環境をWithコロナ、アフターコロナと呼ばれる新しい生活様式に一変させました。“ニューノーマル“とも呼ばれ、今まで当たり前だった行動や普通だった活動を強制的に見直さざるを得ない状況になってきています。

この“ニューノーマル”の考え方は個人の生活習慣だけではなく、ビジネスにも広がってきていると感じます。今まで当たり前に行っていた商習慣や業界ルールも変えてしまう力があるはずです。現に小売業や得意先との商談はWEB会議やオンライン商談に切り替わっていると思います。この“ニューノーマル”の考え方をよいチャンスと捉え、今まで当たり前に行ってきたことを立ち止まって見直してみてはいかがでしょうか?

 

消費財卸売業様において“今だから取り組むべきこと”を3つにまとめてみましたので、今後の検討の参考にしてみてください。

消費財の販売管理の現状と今だから取り組むべき3つのこと

消費財卸売業は、スーパーマーケット、ドラッグストア、ホームセンターなど、小売業をお得意先とする卸売業であり、主に日用品、家庭用品、食品、紙製品、雑貨、化粧品、医療衛生用品を取り扱っている卸売業を指します。この消費財卸売業はスーパーマーケットやホームセンターなどの小売業様と消費財メーカーの間を取り持っていて、小売業から発注される商品を消費財メーカーから仕入れ、滞りなく店舗へ納品することが基本的な業務の流れになっています。

今現在、小売業の売上が伸び、発注数も増加している傾向が続いているため、今までは問題にならなかったことに直面するケースが見られるようになってきました。具体的な例を上げつつ、今だから取り組むべき内容を「受発注管理編」と「仕入・在庫管理編」と「取引条件・リベート編」に3つに分けてご紹介させていただきます。

 

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今だから取り組むべきこと① 「受発注管理編」

小売業の売上が増加し、発注数が増えると受注データ数や物流が増えます。

受注業務をすべてEDI化していれば、受注業務自体の作業工数が増えても対応可能ですが、EDI化が進んでいない消費財卸売業は、受注に関する手作業が大きく増えてしまいます。今までは発注データ量が少ないということで、EDI化を行わず手作業での受注処理を行っていた場合は、EDIシステムの導入を早急に検討する必要があります。

現在EDIシステム導入に関しては、小売業と消費財卸売業で標準ツールになっているのは「流通BMS」です。流通BMSとは、「流通ビジネスメッセージ標準(Business Message Standards)」の略で、流通事業者(小売、卸、メーカー)が統一的に利用できるEDIの標準仕様です。流通BMSを利用してEDI化を進めることで、発注データの手作業が削減され、業務効率化につながります。

一方、得意先の規模が小さくテナントなどに出店しているような小売業や飲食業からの受注業務もあります。小規模の得意先からの受注は、主にFAXや電話で受けているケースが多いため、受注のための事務工数が煩雑になっています。このような小規模の得意先に対しては、スマホやPC端末、タブレット端末から受注を受け付けることができるシステム(WEB受注システム)を導入し、事務作業工数の削減と得意先の囲い込みを行うことをお勧めします。

今だから取り組むべきこと② 「仕入・在庫管理編」

今度は仕入・在庫管理について目を向けてみます。

流通BMSなどでEDI化が進んでいる場合は、仕入業務のシステム化が進み、事務作業工数も削減されています。EDI化が進んでいない場合は、EDI化を進めることで、発注業務と同じように効率化が進みますので、EDI比率を高めることは必須です。一方で在庫管理・倉庫管理については、まだまだ効率化が進んでいないケースがあります。ハンディーターミナルなどの業務端末を利用して、在庫管理精度向上と作業効率化を行うことができます。

最近ではハンディーターミナルの技術も進み、バーコードをスキャンするだけではなく、商品の賞味期限の日付をスキャンして読み取ることができます。以前は商品の管理精度を上げるためには、商品の賞味期限を手入力するしかなく、入荷時の作業時間や作業工数を考慮して断念していたケースも多数ありました。この賞味期限日をスキャンして読み取る技術を利用することで、入荷時に商品のバーコードをスキャンするのと一緒に賞味期限をスキャンすることができ、入荷作業で数量検品だけではなく品質検品も実施することができます。

過去は技術的なハードルや仕入業務運用など変更できないと思い断念していたことを今だからこそもう一度取り組んでみてはいかがでしょうか。

今だから取り組むべきこと③ 「取引条件・リベート編」

最後に取引条件・リベートに関して記載します。

取引条件・リベートに関しては、良い意味で捉えると過去の商習慣と各社の知恵から出来上がったと言えますが、悪い意味ではアンタッチャブルで聖域扱いされていて、業務効率化やサプライチェーン全体の効率化、エンドユーザーの顧客視点が欠けているとも言えます。この取引条件・リベートに関しても2021年4月からの会計基準変更に伴い大きく考え方が変わろうとしています。今回は上場企業が対象になっていますが、いずれ中小企業にも広がっていくものと考えられます。

会計基準変更になる背景にあるのは企業会計基準委員会(ASBJ)が2018年3月に公開した「収益認識に関する会計基準」があります。これまでの日本は企業会計原則に、「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る」という一文があるだけで、ほとんどルールがない状態でした。しかしこの日本独自の会計基準ではなく、国際会計基準に日本の会計基準も合わせようというトレンドが進行しているため、この新会計基準の制定が進みました。この「収益認識に関する会計基準」について詳細を記載するととても長くなってしまいますので、本ブログでは省きますが、取引条件・リベートの売上計上に深く関係しています。

新収益認識基準では、小売業と交わした契約の対価に変動対価(値引き・リベート・返品・インセンティブ等)が含まれる場合、変動対価の額を見積もった上で収益計上する必要があります。よって、得意先が上場企業の場合、今までの商習慣で行っていた取引条件やリベートの方法を見直す可能性があります。

 

このように今“ニューノーマル”の考え方が広がってきていることをチャンスと捉え、今まで当たり前だと思っていた業務や過去の商習慣や業界ルールを見直して、業務効率化を行ってみてはいかがでしょうか。

 

                                            2020/12/25