基幹システムから導き出される店舗分析の役割

流通業や小売業で利用される店舗分析は基幹システムから独立して機能し、データを連携して利用されることもあります。

しかし、DX時代の第3のプラットフォームを構成するビッグデータはリアルタイムを要求しているので、これに対応するには基幹システムと店舗分析を独立して理解するのではなく、基幹システムの機能として店舗分析を理解することが新しい発想を生むと考えます

こちらでは、基幹システム内で機能する店舗分析の計画達成を促す側面の解説で目的を示し、店舗業務の一連のコントロールに占める店舗分析の役割を要(かなめ)として位置づけ、店舗分析として必要な項目を基幹システムと関連して具体例を記述します。

計画達成を促す基幹システムと店舗分析

事実を認識し状況を把握するには、物事が相対的であるということに立脚して考えなければならないのですが、この際に基本となる思考が比較です。

主には、事前に計画した数値に対して未達である項目があれば、計画数値が合理的である限り、数値の悪い部署や売場、そして商品カテゴリーに計画された動きに相違する事象が発生していると推察して、行動や状況の原因を把握する。

 

つまり分析を行うのです。

計画と実績を比較して相違の原因を把握し対策案を立案して改善する一連の行為は、計画達成を促す時に最も効果的なプロセスであると言えます。

 

つまり、店舗分析とは店舗の各種数値計画を達成する道具とも言えます。

この際に利用される計画とは、必ずしも“計画”として決められた項目に数値を設定する必要は無く、モデル店舗の優良部門の数値でも、業界資料の理想的な数値でも良いでしょう。

闇雲に数値の羅列を長時間眺めても、問題点を炙り出せないばかりか、無駄に長い時間を分析に浪費すれば非効率です。

 

また、その後の改善アクションの起案には分析時間の3倍を要すると言われるので、分析が的確であることを担保しつつも、短時間で効率的に行う工夫が必須要件です。

このための方法が“比較”であり、適切な比較対象を予め決めておけば良いでしょう。

 

JALが経営破綻し、再建を委ねられた稲盛和夫氏が経営会議席上で、短時間しか読み込んでいない会議資料から実に的確な指摘をすることを、当時社長の植木義春氏に問われ「数字の方から目に飛び込んでくる。」と返答したと言われます。

これは「新・経営の神様」の異名を取る稲盛氏だからこそ!であり、大半の者は容易にできる方法を採用した方が良いでしょう。

 

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基幹システムから発展する店舗分析がコントロールの要

基幹システム内で機能する店舗分析の“分析”とは、情報を計画と比較するという観察行為により得られる、問題点の原因に関するいくつかの仮説を立てて、発生現場において当事者に確認することです。

そして、その後に立案する改善策を導き出すという判断業務に繋げるのです。

 

つまり、単なる数値の良し悪しを文章表現するということではなく、「観察-分析-判断」という工程(=コントロール)の要となるのが分析なのです。別の言い方をすれば、コントロールとは計画と実績を一致させる技術であり、実績が計画を達成困難になりかけた時の業務改善をする行為の要ともなります。

 

業務改善と言えば、PDCAを回すという手法もありますが、PDCAでもP=Plan(計画)が先行しており、行動(D=Do)の結果をPDCAのC=Check(評価)で分析し、A=Action(改善)はコントロールでは判断になり、改善策を現場に適用することになります。

 

したがって、小売企業においては未だ大半の収益を店舗が獲得しているので、店舗の業務改善が最重要課題であり、このような意味でも店舗分析は小売企業にとっての重点項目になるのです。

基幹システムが持つ店舗分析の必要項目

分析の漢字解釈をすると、“分”は刀と八(分ける)から成り立ち、刀で切り分けることです。

“析”は木と斤(おの)から成り立ち、斧で木を裂き分けることです。

つまり“分析”とは、塊を切ったり割いたりすることなので、例えば“売上”を分析するに当たっては客数や客単価に分解し、更に客単価を平均単価と1人当買上点数に分解して売上の未達原因を探ることになります。

 

店舗分析において売上は、客数、客単価、1品単価、1人当買上点数に分解して分析するので、この際に客数と買上点数は必要項目になります。

ここで言う客数に関して、ファッション小売では来店客数と購買客数に分ける場合がありますが、食品や日用雑貨品小売では来店客数の捕捉は不可能なので購買客数を単に客数と言います。

売場効率の分析には、坪当売上を利用するので売場面積も必要項目になります。

 

従業員生産性指標には、総労働時間数を用いて8時間換算した従業員数を利用するので総労働時間が必要項目です。

広義の仕入(仕入と移動)に関しては、EDIを経たターンアラウンド・データを利用していれば、原価以外に仕入売価が項目として保管されます。

 

しかし、生鮮等のEDIを経ない仕入には仕入売価が欠落する場合があるので注意が必要です。

ロス管理を行う場合には、仕入時からの売価の変動を記録する売価変更項目と売価棚卸項目が必要項目です。

 

ただし、管理を数量に単価を乗じて利用する場合には、前記の売価変更や売価在庫は不要ですが、SKU単位の在庫数量は必要項目になり売価変更情報の一部である廃棄情報が必要です。

今日のようにPOSレジが一般的になっている小売企業においては、単品レベルの売上実績が刻々と収集されますが、仕入や売価変更そして在庫・棚卸項目も単品であり、かつ発生時刻が必要項目です。

 

見落としがちな、単品で捕捉できない情報を架空商品として処理するケースは、結果としてノイズになるので部門情報として処理すれば良いのです。

この際に、単品の積み上げとは別に部門単位の情報も必要項目になることを忘れてはなりません。

そして、可能であれば店舗と管理部門毎の販管費を基幹システムがタイムリーに取得し、店部門単位の営業利益を把握できるようにしたいものです。

 

この販管費は、正確であることよりも凡その実態を反映していれば多少の誤差は黙認できます。

最後に、店舗分析に当たり、必要項目は翌日にならないと把握できないといった問題を克服して、必要時には即時把握可能な基幹システムであるようにしたいものです。

基幹システムから導き出される店舗分析の役割~まとめ~

店舗分析は、売上や荒利そして営業利益の計画と実績を比較して問題点を把握するといった観察業務を経て、原因に関する仮説の立案と現場における確認を経て、改善策を作成するといった判断業務の要です。

この際には、前項で記述した基幹システムから送出される必要項目を取得することになり、必要な加工を施して店舗分析に利用します。

 

これら一連のコントロールが店舗の問題点を解決に導きます。

そして、多少は拙速であってもスピード重視で取り組むことが輝かしい未来を創ることになると推察します。