基幹システムとスーパーマーケットの新しきを知る 新しい業務とクラウドへ

コロナ禍は、これまでのパンデミックの歴史と同様に、現代社会に多大な変革をもたらすでしょう。

 

そこで、今回はスーパーマーケットの近未来の新しい基幹システムを通じて変化した姿を想像しました。

無論、これから起こることですので大きく外れる可能性は高いのですが、当たらずとも遠からずと意識して執筆します。

基幹システムがスーパーマーケットに新たに生んでくれた価値

【登場人物】

いずみ…基幹システム・クラウド・サービス提供企業『チェーンズ社』のセールス

佐藤…中堅スーパーマーケット『キャップ 熱田店』店長

鈴木…中堅スーパーマーケット『キャップ 本部』MD(マーチャンダイザー)

田中…中堅食品卸『カント』営業部員

小林…食品メーカー『六芒星(ろくぼうせい)』セールス

 

昔のスーパーマーケットは大半が朝10時開店だったが、競合が激しくなるにつれて開店時刻が前倒しになり、中には24時間営業のスーパーマーケットもあった。

 

飲食店等への営業時間制限が新規感染者状況により変動し、これは一見良い意味でスーパーマーケットにも影響つまり売上押上効果があったと認識されていたが、実は需要が不安定であるという現象は、特にその場しのぎ的スタイルの小売業は収益悪化に繋がったので、経営は不安定になったのである。

 

ワクチン接種が行き渡ってしばらく、コロナのパンデミックが3年前に収束した後に週休3日制等の労働時間短縮傾向がスーパーマーケットを極度の労働力不足に陥れ、特殊な立地の店舗以外は10時開店に戻ったのである。

 

そして、3密回避のために急速に普及した業務指示や情報共有のスマホ利用は一方通行から双方向に進化を遂げて、昔のように従業員のほとんどが開店前に出勤して朝礼を全員で行う習慣は無くなり、一昔前の様に店長等が個別面談形式で作業指示を出していた時に比べて効率的になっていた。

 

また、発注作業等も無くなり基幹システム内で稼働する自動的に処理された結果をリモートで監視すればよく、出勤する従業員の人数は極端に少なくなった。

だから、開店案内放送の機械の声が無機質に響く店内には、従業員より買い物客の方が多いのは日常の光景である。

佐藤「以前は、商品作業のすべてを店舗従業員が行っていたが、生鮮品以外は開店前に本部から手配された店内物流員が品出しや陳列を完了してくれるので、センター加工された長期鮮度維持が可能な生鮮品や惣菜を適時入荷するたびに陳列するだけになった。

 

おまけに、基幹システムが適正陳列在庫量を計算しながら発注を自動的に行うので、棚に陳列できない分をバックヤードに置くこともなくなり、バックヤード在庫を店頭に移動する作業も無くなり人員削減にも役立っている。

 

基幹システムが刷新されたおかげで、作業が効率的になって総作業量が減り、労働生産性が劇的に改善したよ。

お陰で給料が増えた上に残業もなくなって、低賃金長時間労働の権化だったキャップも応募が少ない募集広告に頭を悩ますこともなくなって助かるよ。」

 

スーパーマーケット『キャップ』は、従業員の採用困難という大きな課題を解決するために、『チェーンズ社』が提供している最新の基幹システム・クラウド・サービスを2年前に契約して、昨年から本格的に稼働し始めたのであった。

 

佐藤は店長として熱田店のパート・アルバイト採用を担当しているが、コロナ終息後の景気回復時には募集をしても全くと言っていいほど応募が無く、足らない作業を肩代わりしていた。結果的に残業時間が違法状態になり、本部から残業禁止命令が出たのであるが、それでは店舗が回らなくなるので悪いとわかっていてもサービス残業をしていたのである。

それが、新基幹システムが稼働して間もなく、店舗でしていた作業が激減したのであった。

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基幹システムにおける新陳代謝とは?

 

小林「商品サンプルは本日午前着荷指定で送った梱包の中に入れましたが、特にお勧めしたいのは弊社の『野菜人生』シリーズの新商品で、これからの健康志向に合わせた柑橘系風味の『柑橘みっくす100%』です。

冷やしてお試しいただくと今までにない爽やかさを実感していただけます。」

 

コロナ禍前の商談は、商談日に商品サンプルのケースを抱えたメーカーセールスと商談確認書を携えた帳合問屋営業部員が並んで座り、上から目線で前に鎮座する小売本部MDと面談するアナログ商談が専らであった。

しかし、コロナ禍では当初相当な抵抗があったものの止むを得ずリモートになり、慣れてしまえばデジタル商談の効率の良さはメーカー、卸、小売共に感じるものであり、特にキャップのMDである鈴木にとって面談時のセールスから受ける熱意と押しの強さに負けてしまうことなく、事前に送られてくるデータを冷静に考慮し且つ客観的に判断できるようになった。そのため、新商品の売上見込みが当たる確率が向上して成績向上につながっているのであった。

 

鈴木「小林さんが商談システムに入れてくださった『柑橘みっくす100%』の消費者アンケートと試売店舗の実績を見ると、過去の同種商品より売上が取れるだけでなく、カニバリ(共食い)も無いので分類の売上向上にもつながるようだけど、前回のCPFR(製・配・販による売場効率向上検討会)で六芒星さんの商品が売上の割には荒利が少なかった反省の二の舞を踏まないかな。」

 

アナログ商談であれば小林セールスの熱意と押しの強さに負けて、鈴木MDは取引条件を提示する前に採用を決めていたのだが、デジタル商談では過去の振り返り等の冷静さを持ちながら対応されるので、カントの田中は画面の向こうのモタツキにイラつきを覚えていた。

 

田中「その点に関しては、ご採用のご判断をいただければキャップさんには決してご損はさせません。

六芒星の小林さんとも十分に腹蔵なく話し合い、他に類を見ない条件を提示させていただきます。鈴木さんとは持ちつ持たれつではないですか、今回も一つ田中を信じて貰えませんか。」

 

カントの田中はアナログ商談の常とう手段である情に訴える手を持ち出してきたのであるが、残念ながらリモートではほとんど効果がないのである。田中は意識の切り替えができていなかった。

 

鈴木「田中さんの昭和的な匂いのするアナログ商談スタイルは変えてくれませんか。キャップは基幹システムを切り替えて、商談もデジタル化しているのです。

言わばシステムのみならず業務運営のすべてが新陳代謝しているにもかかわらず田中さんが昭和を続けていると、キャップの大切なお取引先であるカントさんの営業さんにも新陳代謝してもらうことになりますよ。」

 

鈴木のコロナ禍前と違う毅然とした態度に接して、田中は唖然としていた。

鈴木の意図が呑み込めていないのであるが、新陳代謝とは新しきものが古いものにとって代わることであるので、古い営業スタイルの田中が交代させられることを意味しているのである。

スーパーマーケットは基幹システムにより、新進気鋭の業態へ

いずみは、キャップに基幹システム・クラウド・サービスを提案し、的確な提案内容がキャップ経営層に評価されて採用の栄冠を手にした新進気鋭の営業員であった。某国の元首相がジェンダー・ギャップな発言をして物議を醸したが、チェーンズ社は早くからジェンダーフリーな企業であり、現在の経営層も能力と実績を正当に評価していた。

そのいずみが、今日はキャップでチェーンズ社基幹システム・クラウド・サービスにテスト稼働から協力した熱田店の佐藤店長を訪ねて、御礼を言うとともに評価を聞きに来ていた。

 

佐藤「チェーンズさんの基幹システムを採用してキャップの業務がすっかり変ったよ。

コロナ禍が収束して前に戻るかと思っていたら、通販業者にシフトした需要はシェアを高めている上に、外食需要が戻って内食が減ったのでスーパーマーケットでの購買が減ってしまった。

前みたいに売上を取るために利益度外視の営業スタイルを続けていたらどうなっていたかと思うだけでゾッとするよ。

新しい基幹システムの運用と業界の事を熟知しているチェーンズさんの指導、特に商品作業の一部廃止と特売の見直しが店舗作業の軽減に役立った上に、店部門の利益状況が2営業日以内で把握できる情報である『部門別総括情報』ができて高収益の筋肉体質にキャップは変わったよ。」

「ありがとうございます。マクネアの『小売りの輪理論』を単純に解釈するとスーパーマーケットは衰退せざるを得ないのですが、過去の基幹システムの範囲に拘らず、新しいテクノロジーを積極的に採用して、チラシや商談、文書管理や製配販の情報共有とCPFRやカテマネ(カテゴリーマネジメント:製配販が協力して利益を極大化する取組)を基幹システムに取り込むとともに、従来から在る販売・購買・在庫・部門別管理・買掛の自動化を通じた効率化を実現した新進気鋭の基幹システム・クラウド・サービスをご利用いただけば、スーパーマーケットは古い業態から脱皮して新進気鋭の業態に生まれ変わると思います。」

 

佐藤「おいおい、今日はいずみさんの独演会だったか(笑)。でも、その情熱と知識でこれからもキャップを頼むよ。」

 

すっかり日は傾いて、真っ赤な夕日が空一面を染めていた。それはあたかもいずみの情熱を映し出しているようにも見えた。

コロナ禍は多くを変えてしまったが、いずみの基幹システムに対する情熱にも油を注いだようである。

スーパーマーケットの基幹システム導入ポイント

ここまで、中堅スーパーマーケット『キャップ』の基幹システム導入について、ドラマ仕立てでご説明してきました。

ここからはスーパーマーケットの基幹システムの導入においてのリスクとそれを踏まえたベンダー選定ポイントについて解説していきたいと思います。

 

スーパーマーケットの基幹システムは法令対応やシステム対応が多く求められます。過去には軽減税率への対応、今後はインボイス対応・INS回線廃止にともなう対応・サーバOSの保守サポート切れなどがあり、スケジュールや予算の制約のある中での導入が待っていると言えるでしょう。様々な制約があるため、スーパーマーケットへの基幹システム導入はトラブルが起きやすいです。

 

具体的なトラブルの事例としては以下の点が挙げられます。

要件定義でのギャップ洗い出し漏れで、システム運用が混乱

スーパーマーケットにおいては基幹システムが全業務にわたっているため、確認すべき項目が多いと言われています。

要件定義において、漏れなく確認を行うことが重要となります。

現場への浸透ができず、運用に混乱

非正規雇用が多いスーパーマーケットにおいては曖昧な運用には注意が必要です。

そこで現行業務とのギャップを洗い出し、変更する運用を組織として意思決定するべきです。

その結果をマニュアルとして標準化し、末端まで浸透しきれるか、がポイントになります。

カスタマイズ開発項目の仕様が現状と違い、運用できない

選定した基幹システムパッケージは他社のスーパーマーケットで運用実績はあっても、自社独自仕様へ対応する開発要件については、システム運用できないというトラブルが起きがちです。

エラーチェックのロジックやマスター項目が多すぎないか、また不足はないか、他社でも同様の開発を行っている事例はないか、を確認しながら行うと安全に導入できるでしょう。

商品マスターの精度が低く発注トラブル

初めて基幹システムを導入する際は特に、商品マスター整備が重要なポイントとなります。

何万件もあるマスターを全て正しく登録することは至難の技です。取引先に協力をもらったり、社内で手分けして確認を何度も行ってこそ、スムーズに稼働できるのです。

導入範囲が広く、対応が追いつかない

いくら準備しても基幹システム導入時には、多くの利用者に対し、質問回答や説明が必要になります。

例えばEDI導入、自動発注システム導入、そして基幹システム導入など、一度に導入せず、分散して導入した方がよいでしょう。

スーパーマーケットの基幹システムベンダー選びのポイント

スーパーマーケットの基幹システムベンダー選びでは、上記で挙げたトラブルを防止するための観点である「マイナス面の払拭」と、導入効果を求める「プラス面の追求」の2つのポイントでベンダーを選ぶことが重要です。

1)マイナス面の払拭 (導入リスクを下げるための観点)

  • SEの質 :スーパーマーケットの業務を知り、運用想定を理解しているSE(システムエンジニア)であること。
  • 導入方法のノウハウ:システム移行時にトラブルにならないよう、リスクを下げる導入方法をとっている、その方法を知っている。
  • 業界の評判 :スーパーマーケット業界のウワサが良いこと。業界は狭いので2~3社に聞けばだいたいベンダーの特徴がわかる。

2)プラス面を追求する(システム活用し効果を出す観点)

  • パッケージの機能 :1つ1つがどこまで考慮されているか、機能の便利さ、深さ、運用を想定してくれる
  • 提案するベンダーの営業の質 :課題解決型の提案をしっかりしてくれる
  • 導入効果事例が豊富 :スーパーマーケット業界での導入効果事例を数多く持っている。スーパーマーケットは同様な業務が多いため、 豊富な導入事例がれば、ベンダー側は業務を理解しているケースが多い
  • 基幹システムのオプション機能が豊富か:自動発注や商談システムなど、基幹システムと連携しているオプション機能が豊富であれば、業務効率化できる範囲を増やせられる
  • クラウドサービスとオンプレミス型の双方と持っている :サーバのトラブルはダイレクトに損害になるため、安心できるサーバ環境を持っていることは重要
  • パッケージソフトであること:長く使う仕組みなので、パッケージソフトでバージョンアップにより機能を提供してくれる体制を選ぶ

 

ここまで、前半はドラマ仕立てでスーパーマーケットの基幹システムのトレンドについてご紹介し、後半は実践的な観点で基幹システム選びについてまとめました。

スーパーマーケットにとって基幹システムはほぼ全ての業務に影響を及ぼす重要な仕組みです。

さらに、少子高齢化により売上が伸び悩む時代、デジタルトランスフォーメーションが求められる中、重要性は増しています。

ここで挙げた基幹システムのトレンド・導入リスク・効果を踏まえてご参考としていただき、利益向上につながれば幸いです。