基幹システムで実現する発注効率化 仕事のナビの真骨頂

今や発注を自動発注に委ねると、発注作業を従業員が実施することはない様に錯覚しがちですが、自動発注に委ねることができるアイテムは安定的な売上実績であることが前提であり、前提から外れるアイテムは手動発注を行うことになります。

自動化が実現すれば究極の効率化が実現できるのですが、手動発注が残る限りは、発注効率化は欠くべからざる課題であるのです。

 

しかしながら、発注作業を効率化するだけでは小売店舗の作業生産性向上に寄与する部分は薄いので、商品作業全体にフォーカスを当てて小売業の労働生産性向上に貢献すべく基幹システムを巻き込んだ改善を目指すべきです。

今回の解説では、基幹システムで実現させる発注効率化と店舗作業生産性向上を刑事ドラマ仕立てで発注の本質を嚙み砕きつつ、効率化の本来的な姿すなわち真骨頂を解説します。

基幹システムと発注効率化は何処に

【登場人物】

東海いずみ(いずみ)・・・愛知県警刑事部捜査第一課の新米刑事

新田抗一郎(新田)・・・愛知県警刑事部捜査第一課のベテラン刑事

大石ちなみ(ちなみ)・・・チェーンズ大学経営学部教授

中村正章(中村)・・・・・チェーンズ大学経営学部助手

 

空は既に漆黒の様相を呈していて、幅の狭い道路の片側はビルの建設工事中なので街灯がなく、薄明かりは人物の存在がわかる程度でした。脇の新築ビルから出てきた人影はハイヒールの音を立てて歩いているので女性であることは解かるのですが、顔は判別できません。その女性を背後から追う人影があり、突然かなり太めの棍棒らしき凶器を振りかざして、女性めがけて振り下ろしました。人影は失神した女性のカバンや懐を探っていましたが、カバンの中にUSBメモリーを見つけると自分の懐に入れて、失神した女性を一瞥すると足早にその場から立ち去りました。人影の人物が街灯の下を通るときに照らし出された顔は、中村正章でした。

しばらく後の現場には、パトカーをはじめとした警察関係の車両が5、6台止まっており、騒然とした中で現場検証が行われていました。

いずみ「新田さん。ホシ(犯人の警察隠語)は逃走したので緊急手配をしていますが、未だ見つかっていません。タタキ(強盗)のマルガイ(被害者)の身元は持っていた身分証明書からチェーンズ大学経営学部の先生であることが分かっています。遺留品がホシの物かマルガイの物か確認しています。目撃者は居ないようですがこれだけ多く有ればホシの割り出しも簡単だと思います。」

 一般市民にとって強盗事件のほとんどはニュースの世界にしかなく、現場を目撃したり被害者になることは極めて稀ですが、愛知県警刑事部捜査第一課のいずみの様に強盗や障害等の強行犯を捜査する事が仕事の人間には日常なのです。今日も名古屋市中区栄1丁目で発生した強盗事件に駆り出されたのです。事件現場は、昨年9月に完成したコンピュータ関連会社新築ビルの前の道路で、被害者は救急車で搬送された後でした。

新田「マルガイは若い女性だったナモ。大学の講師でもヤットリャースカ(しておられるか)。」

いずみ「教授だそうです。それも、その道では名の通った権威だそうです。」

新田「ほう。若くして大学教授とは大したもんダガネ。いったい何を教えてリャース。」

いずみ「小売店舗の作業生産性向上に関する研究では著名な学者さんだそうです。その件で、(脇の新築ビルを指さして)ここの会社にインタビューをしに来ていて、出てきたところを襲われたようです。ホシはマルガイのカバンや懐を探った形跡があるので物取りであると思われますが、現金やICカードには手を付けていません。単なる金目当てでは無いようです。無くなった物を確認中です。マルガイの意識が戻っていないのではっきりしたことは解かりませんが、インタビューを受けていた人物に確認をしたら、マルガイはノートパソコンにUSBメモリーを挿して使っていたようなのですが、USBメモリーが遺留品にはありません。それ以外は確認中です。」

新田「USBメモリーか。中に何が記録されていたかは判っとるのかナモ。」

いずみ「インタビューは小売店舗における発注効率化と基幹システムの関与に関してだったそうなので、その線で間違いはないと思います。」

新田「なんだか小難しいガネ、発注効率化と基幹システムが現場からノウナッタ(無くなった)カネ。凶器は残っとったか。」

いずみ「鈍器のような物が凶器だと推測されますが、現場の遺留品にはそれらしき物は見当たりませんでした。」

相変わらず新田は季節外れのよれよれのレインコートに身を包んでいるので傍から見ると風采が上がらないし、今やべたべたの名古屋弁を話すのは市長の他は少なくなってきているが、この名古屋弁を話す希少人物は県警きっての刑事であり数々の難事件を解決した第一課のエースです。いずみは新田から多くのことを学んできて、これからも色んなことを聞きたいのですが、彼のファッションセンスと名古屋弁には閉口しているのでした。

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失せた基幹システムと発注効率化がナビ

梅雨明けの爽やかな日差しが木々の緑を照らし出し、小枝を微かに揺らす程度の心地よい風が吹いています。ここは、緑の多いキャンパスで学生に人気のあるチェーンズ大学の経営学部研究棟前の、芝生の新緑が目にまぶしい広場です。爽やかな雰囲気に似つかわしくないよれよれのレインコート姿の中年男とファッション系のモデルと身紛う長身の若き女性が研究棟に入っていきます。そして、居並ぶ研究室の名札を確認してお目当ての部屋が見つかったのでドアをノックしました。

いずみ「失礼します。愛知県警の者です。大石先生の事件に関してお話を伺いにまいりましたが、入ってよろしいでしょうか。」

中村「御存じの様に大石先生は入院中で部屋にいません。私は研究室の助手ですがよろしいですか。」

新田「大石先生が不在であることは知っとるナモ。報告書を作成するための型通りの捜査なんで、ご協力してチョーセンカ。」

中村は警察と聞いて一瞬顔が強張ったが、すぐに平静を装い鍵を開けてドアを開け二人を招き入れた。

新田「忙しいとこ悪リーネー(ご迷惑ですね)。御みゃーさん(貴方)名は何と言ヤース(言いますか)。」

中村「中村。中村正章と申しまして、大石先生の助手をしています。失礼ですが、警察の方であることを確認したいので、身分証明書か何かを拝見できますか。」

身分証の提示を要求された一瞬、新田の目が光ったが、中村には気づかれなかった。

新田「これは失礼したナモ。これが警察手帳でここが私の身分を表すとこ。これでエーか(良いですか)ナモ。ところで、大石先生は発注効率化と基幹システムを研究しとリャーシタ(しておられた)と聞きましたが、御みゃーさんも同じことをやっとリャーシタカ。」

中村「大石先生は基幹システムと発注効率化が深くかかわるとして研究を進めていらっしゃいましたが、私は発注効率化に絞って研究を進めていました。」

新田「ホウカネ(そうですか)。御みゃーさんは発注効率化かね。そんなら、発注作業が売り場だけで済むようにバックヤードに在庫がある商品は先ず売り場への品出しをヤラナカン(しなければならない)し、定番発注の納品日が特売の納品に被る場合はヤレセン(できない)ようになり、桁違いや発注単位数量の間違いがチェックされるPDAを利用した発注が効率化を推進する事は御みゃーさんの研究カネ。」

中村「ええそうです。1週間ほど前に大石先生から質問されて答えました。」

新田「ホウカネ。メチャンコ(大いに)参考になったガネ。ほんならこれでゴブレイ(失礼)します。いずみ。長居はダチカン(いけない)。」

新田といずみは、中村に軽く会釈をして出入り口の扉を開けて出て行った。中村は扉が閉まるのを見届けると脇机の引き出しのカギを開けて引き、中にUSBメモリーがあることを確認した。突然、扉が開いて新田が頭だけ隙間から出したので、中村は慌てて引き出しを閉めて新田を睨み付けた。

新田「マッペン(もう一度)エエカネ(いいですか)。売上実績や天候などのコーザルデータ、予実対比を見ながら発注できるようにした方が発注効率化が可能になるとイヤーシタ(言われた)のも御みゃーさんかナモ。」

中村「いいえ。私は実績やコーザルを見て発注すると、却って効率が落ちると申し上げました。」

新田「ソーカナモ。ホンナラ本当にゴブレイします。」

外に出て芝生の広場で新田に向かっていずみが質問しました。

いずみ「新田さん。基幹システムと発注効率化に詳しいですね。」

新田「エカネ(良いですか)。現場百篇は遺留物のことだけと考えたらダチカンて(いけない)。ノウナッタ(無くなった)物の方がドエライ(ものすごい)手掛かりがあるんダデ(だから)大石先生の本を読み込んできたんダガネ。これが真犯人を追うナビ。トロクサイ(あほらしい)遺留品の調査をするよりイイガネ。」

基幹システムと発注効率化に潜む真骨頂

数日が経ち、机と椅子しかない殺風景な部屋に中村と新田、いずみが居た。ここは、新田が中村に任意同行を求めた中警察署の取調室です。

新田「中村先生。本日は任意にご協力をシテチョーダーテ(して下さって)悪かったね。チャット(直ぐに)終わらせるで我慢してチョーよ。」

中村は任意とはいえ警察に呼び出された上に、意味不明な単語を連発する新田の名古屋弁にも苛ついていたのである。

中村「大石先生の意識が戻らず心配していますが、基幹システムと発注効率化の論文発表期日が迫っているので忙しいのです。」

新田「丁度纏めてリャースなら都合がイイガネ。発注効率化についてマーイッペン、コイ(言う)タッテチョ―スカ。」

中村「マーイッペン、マーイッペンと時間ばかりを取られたら、論文がワヤ(だめ)にナッテマウガネ。失礼、新田さんの名古屋言葉を聞いていたら釣られてしまいました。でも、今回限りですからね。そもそも、小売業の発注は、最近は自動発注にすることが多いのですが、自動発注が万能では無く、PDA等の発注端末を利用した発注の方が高精度になる場合が多々あるのです。小売店舗では理論や理屈通りではない売り場になっているケースがあります。ですから売り場を見ながら発注する作業は、単なる発注作業のみならず売り場の整理整頓を行う場合もあるのです。この時に注意しなければならないのは、発注効率化が図られていないと時間ばかりを要して、発注締め時間に遅れてしまうことを避けなければならないことです。バックヤードに在庫があることや特売対象の有無、当日が発注できる日であるかと納品から品出しまでの日数が発注端末に表示され、直近の売上や仕入実績に応じた発注数であるかの検証結果も表示されるとよいのですが、それらの表示を見ていては発注作業が非効率になるので、設定されている閾値を逸脱している場合のみビープ音等で警告するに留めて、発注者は発注すべき商品を判断するのみで作業ナビは基幹システムが誘導することが大切なのです。つまり、発注すべき商品の基準が売り場に明示されており、適正発注数は事前に深い商品知識を持つものが事前設定すべきなのです。これは基幹システムと密接に連携をしたシステムの構築が欠くべからざる真骨頂なのです。」

新田「ドエライ(すごい)トロクサイ(ばかばかしい)ことをコイトッタラ(言っていたら)ダチカンんで(いけませんよ)。御みゃーさんは事件発生日の当日の講義で、実績を見ながら発注することが必要であるとコイとったと学生からの証言をトットル(取っている)デネ。ほんの数日経っただけで違うことをコクのはチョースイトル(調子に乗って入る)としか思えんガネ。基幹システムとの密接連携で発注効率化が実現できることは、大石先生が事件直前にインタビューした小売業に特化したIT会社で初めて聞いて感心し、USBメモリーに保存したことはIT会社の役員さんからの証言で明確になっとるデネ。御みゃーさんがUSBメモリーを見たことを自白してマッタンダガネ。」

中村の顔が一瞬で青ざめて、取調室のドアから脱兎のごとく逃げ出した。

新田「ナーニー。鍵を掛わん(掛けない)カッタノカネ。いずみ。チャットボワナ(急いで追いかけなければ)。」

新田の言葉を聞くまでもなく、いずみは中村を追いかけた。中警察の間取りを見知っているいずみはすぐに追いつき、逃げられないと思った中村はいずみを襲ってきたのでした。しかし、愛知県警の中でも護身術では五指に入るいずみの相手にはならず、瞬時に両手に手錠が掛けられました。

基幹システムと発注効率化の研究を理解させる

いずみ「現逮確保!」

任意同行なので逮捕状が無く、いずみを襲ってきたという公務執行妨害の現行犯逮捕でした。一通りの手続きが終わり、新田といずみは自販機でカップコーヒーを買い、長椅子に腰掛けながら会話していました。

新田「オウジョウコイタ(大変だった)けど、これからがマット(もっと)オウジョウスルガネ。基幹システムと発注効率化をマット勉強セント(しないと)公判(裁判)が維持できんガネ。検察官さんはエライ(つかれる)けどオウチャク(なまける)せんようにしてもらお。」

いずみ「中村はUSBに書いてあった、発注効率化のためには実績やコーザルを見ないで発注する研究成果を証言したのは、近々発表する論文で頭が一杯だったので、思わず私たちに言ったんですね。」

新田「ソウダテ。公判ではそこを裁判員に理解してもらわなイカンガネ。犯人を確保できたのは始まりに過ぎず、今からがマット(もっと)大変だガネ。」

2021/7/14