小売業の標準化を支える基幹システム その基本と実践!時代劇スタイルで解説

基幹システム流派の学問所で師範を務めている主は、度重なる難問の対応に悩まされていた。

優秀な弟子が居れば師範代として難問に対処させることができるのであるが、太郎は長い間の指導にも関わらず、目先の事に捕らわれて上手く対処できないのである。つい先日も弟弟子の次郎が目標を達せずに終わったことを責め立てて、精神論を振りかざしたのである。

 

常日頃、目標の未達は実行方法と行動計画の問題に求めるように指導していたにも関わらず…!

そして、主が抱える難問の一つは、世話になっている米問屋の大番頭から作業効率を大幅に改善する案を提示するように言われたことである。

主は既に某大名家の城代家老からの難題に手一杯で、とても米問屋の難問にかかわることができないのであるが、世話になっている大番頭故に無下にもできないからである。

基幹システムを利用した標準化は結果よりプロセスを重要視

【登場人物】(すべての組織・人物はフィクションです。)

主(あるじ)=基幹システム流派の学問所で小売商いの理を教える師範

太郎(たろう)=主の指導の下で基幹システム流派の教えを学ぶ弟子。

次郎(じろう)=太郎と同じく基幹システム流派の教えを学んでいる弟子。

 

太郎は居るか。

 

太郎

何か御用でしょうか。

 

お世話になっている米問屋『越後屋』の大番頭さんから手代や丁稚の作業効率を上げる方策を問われたのであるが、お前ならなんとする。

 

太郎

それでしたら、以前にご師範から教えを受けたチェーンストアの管理基本である『標準化』ではないかと存じます。

 

主は太郎の意外な返答に少々当惑した。いつもであれば最初の返答は的外れであり、主の助言により的確になるからである。

 

(膝を手でぴしゃりと打って)良く申した。其方が申す通り、作業効率を上げる方策は我が基幹システム流派の根幹をなす教えの一つである標準化である
 
とかく世間では標準化を規格化と誤解する向きが多いが、別物ではないが同一でもない。その辺りを説明してみよ。

 

太郎

えーと。あのー。そしてー。なにがなにしてなんとやら。

 

意味のないことをごちゃごちゃ申すでない。この度の即答を褒めたにも拘らず、内容の質問に答えられないとは情けない奴じゃ。教えて遣わすから心して聞き漏らすでないぞ。
 
考え方としては、常に最良の形や方法を選んで、関係する者どもに教え、教えた通りに実行できる状態を作り上げながら、常に新しい最良を発見する努力、別の言い方をすれば修正を続けることが規格化である。
 
目標としては先ず6割5分を規格化し、次いで8割5分、最終的には9割5分を規格化するのだ。じゃが、常に非規格部分を残すことが肝要である。

 

太郎

ご師範。一つお聞きしても良いでしょうか。

 

其方の長年の修行からすれば、最早免許皆伝すら与えても良いのであるが、未だ叶わず続けておる。免許皆伝であれば問いを許さぬところであるが止むを得ない。言ってみよ。

 

太郎

規格化の度合いを測るにあたり、結果は如何なる値で捉えれば良いのでしょうか。

 

その勘考が間違うておる。標準化の規格化は結果では無く、手続き(プロセス)や道具や動作を優先させることが重要なのである。

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道徳的期待を押し付けない基幹システムの標準化

 

太郎

では、手続きや道具や動作を決められたとおりに行うように厳しく教え、違えた時には叱責すればよいのですね。

 

そうではない。教えた後に違えた時は、作業方法の要素である道具と動作と手順に間違いがあるか、指南書(マニュアル)や教え方に足らぬところがあると考えるのである。決して道徳的な期待をするべきではない。

 

太郎

そうでしたか。やっと合点が行きました。基幹システム流派のカラクリ(システム)を読み書き算盤(そろばん)ができない丁稚にも解るようにする指南書を多くの労苦を費やして作り上げ、システムを使いさえすれば標準化が行えて作業効率が大幅に改善するといった理(ことわり)だったのですね。

 

よくぞ辿り着いた。その通りじゃ。我が基幹システム流派では、指南書に記述された以上の方法が有れば指南書を改めるべきと考え、行う者の道徳心を全く期待しないと教えておる。
 
つまり、システムを使いさえすれば最良の作業方法になるように仕向けるのである。そこで、越後屋の大番頭さんにお渡しする指南書作成を其方に与える。

基幹システムは結果が自然に標準化に誘導

やはり太郎は太郎であり、以上でも以下でもなかった。しかし、抜かりのない太郎は早速弟弟子の次郎に手伝わせるのであった。

 

太郎

ご師範から与えられた指南書作成の経緯は申したとおりであるが、次郎には標準化手順を調べてもらいたいのだ。

 

次郎

心得ました。ところで兄さんは何をなさるのですか。

 

太郎

越後屋さんへ行き、番頭さんや手代さん、丁稚らに聞き取りをしてくる。

 

次郎

何に関して聞き取りをなさるのですか。

 

太郎

つべこべ言わずに、言われたことに早速取り掛かればよいのだ。

 

人は誰しも自分に都合の悪いことを、自分より地位の低い者から指摘されたり質問をされると立腹するのであるが、太郎も次郎に下心を見透かされそうになったので声を荒げたのであった。
 
太郎は越後屋に行き、越後屋の依頼を任された旨を恩着せがましく言いつのって、越後屋が贔屓にしていた八百善の仕出し(最高級料理の代名詞)と下り物の酒(高級酒)にありつこうとしたのであった。
 
だが、徳川将軍御用達の格式を持ち、伝説に『一両二分(現在価値換算6万円前後)の茶漬け』が伝わる八百善の仕出しを一介の学問所見習いに供するはずはないのであった。

次郎

兄さん、越後屋さんの聞き取りは首尾よく行きましたか。

 

太郎

折角、良い指南書を進ぜ様と思うておったが、程々で良いと思いなおした。ところで、標準化の手順はできておるか。

 

次郎

調べましたる処、先ず良き事例と悪しき事例を集め、その中より最良の方法を選びて皆に腹落ちするよう解かり易き文言を用いた文章と絵図面や芝居で指南書を書きます。

 

太郎

なんだ、存外簡単なものだな。

 

次郎

これで終わりではないのです。むしろここからが肝心な部分と心得ます。つまり、実験を繰り返すのですが、先ずは1店舗で行い障りの有る無しを調べて手直しし、実験店舗を3店舗にして繰り返して町内(エリア)すべての店舗に広げて江戸市中(ゾーン)の店舗で行ってから全店で実施させるのです。

 

太郎

随分面倒な手間暇をかけるな。1店舗で上手くいくようになれば、直ぐに全店に指図すればよいのではないか。

 

次郎

そういった思う違いをするところが兄さんの悪しき心得なのです。

 

太郎

悪しき心得者とはご挨拶だな。しかし、その様なまどろっこしい事を経ても作業効率が上がらなければ何とするのだ。

 

次郎

今一度、良き事例と悪しき事例を集める事に立ち戻ります。

 

太郎

では、作業効率が上がってからは如何にする。

 

次郎

規格化された部分を関連する者に訓練して、腹落ちした者には例外なく行うように追い求めるのです。一番心せねばならない事柄は、教えて腹落ち度合いを見据え例外なく行うことを追い求めることなのです。

 

太郎

そのための道具としてシステムを利用するのか。

 

次郎

多くの道具は一連の手順で使われる物であり、システムは一連の手順を誘導します。つまり、優れたシステムを利用する事が標準化を誘導するのです。それ以上に……

 

最後を聞き終わらぬうちに、太郎は居眠りをしていたのだった。

65%の規格化と35%の非規格化を許す基幹システムと標準化

太郎は次郎の調べた標準化に関する事柄を、自分の手柄として主に申し上げたのであった。

 

太郎、でかした。よくぞそこまで調べ上げたものじゃ。ところで、基幹システムと標準化との繋がりは何とするのじゃ。

 

太郎

え!

 

太郎は次郎からシステムとの兼ね合いを聞き漏らしていたので、主の問いに窮したのであった。

 

たわけ者。相変わらず次郎からの聞きかじりを言ったのであろう。そろそろお前も次郎頼みを卒業せねばならんの。

 

太郎

恐れ入りました。では、御師匠様、基幹システムと標準化の繋がりはいかにせよと仰せられるのでしょうか。

 

頼りない問いよのう。規格化された作業方法の3から5種類をシステム化された基幹システムを使い、極力例外が無きように基幹システムをそのまま使いこむことじゃ。

 

太郎

基幹システムの機能10の内10を規格化するとのことでしょうか。

 

違う。最初は10の内6割5分を規格化し、3割5分は非規格化とすることが無理なく全員に腹落ちする工夫である。そして、放置すると効率が落ち始めるので、常に見直し続ける事が肝心な処である。

 

今回も太郎は主の心証を害してしまった。八百善の仕出しに有り付くには100年を要するかもしれない。

 

本ブログを執筆したのは、名古屋に本社をおく流通業のシステムベンダー「株式会社テスク」。

小売業向け基幹システム「CHAINS」、卸・メーカー向け基幹システム「GROWBSⅢ」を提供しています。

お役立ちガイドブック資料も公開してますのでそちらもご覧ください。