「やめとけ」と言わせない!小売業バイヤーの働き方改革とは?

新聞、テレビ、雑誌等で ”働き方改革” という言葉を頻繁に目にするようになりました。

今回はその改革をバイヤーに絞って(特に量販店小売業のバイヤーさんを中心に)、どんな改革が理想なのか?私なりに考えてみたいと思います。よろしくお付き合い願いますm(_ _)m

小売業のバイヤーの仕事は、時代の流れとともに増大の一途をたどっています。

 

日々、気の毒になるくらいの過密なスケジュールをこなし、そこに取引先や店舗からの電話・メールの嵐。ゆえに、いつもやることが山積しています。

本来の仕事の時間を確保する効率化のために利用しているはずのメールやExcel作業等の対応が、主たる仕事になってしまっている人も多く、現場よりも机上での仕事が増えてしまうことで、本来の仕事である利益の向上お客様への価値の提供といったものは、ヘタをするとないがしろにされ、目の前の仕事をこなすのに日々精一杯という本末転倒の状況がちょくちょく見受けられます。

よって、今こそバイヤーには働き方改革が必要であり、商習慣の見直しや刷新が求められていると感じています。

 

  • バイヤー本来の仕事は何なのか?
  • 多忙の原因は何なのか?
  • バイヤーの役割は今後どうあるべきなのか?

 

上記を明確化し、思い切った改革をする必要があるでしょう。

そもそも仕事の本質は、お客様に”価値”を提供することだと私は思っています。言い換えれば、サービスを受けたお客様が喜んで満足してくださるかどうかです。

決して、綺麗な分析資料をつくることでも、会議の発表で褒められることでも、また取引先にいい人だと思ってもらうことでも、取引先を論破して、荒利を確保し自分が満足することでもありません。

 

何も私は、現在のバイヤーの仕事を否定するわけではありません。多くなり過ぎたバイヤー業務を分類して、断捨離して、時代に適応したやるべきことにシフトすることを妄想してみただけです。

ゆえに、今回の記事は、ごく一例として、楽しみながら読んでいただければ幸いですm(_ _)m

目次

小売業バイヤーは何故そんなに忙しくなったのか?
「時代とともに仕事の範囲が広がった」

約30年前、私が小売業の仕事に携わったころに、バイヤーの仕事は「集荷業」と「商品開発」だと教えてもらった記憶があります。

バイヤーは、売れる商品を見極めて、その商品を調達(買い付け)することができたら、30年前の”ものが売れる時代”においては、その調達力・開発力で、十二分に優位に勝負できました。

 

しかし、時代とともに”売れない時代”に移行し、バイヤーは、マーチャンダイザー(MD)とも呼ばれるようになり、これまでメーカーが担ってきた商品価格の決定や商品価値のお客様への伝達、そして販売戦略までもがバイヤーの仕事となり、調達~販売、商品育成まで、その仕事に含まれました。

この正解のない思考力と行動力勝負の手探り状態においては、考えれば考えるだけ、行動すれば行動するだけ仕事量は増大しますし、それにより出せる結果にも、バイヤーの成長度合いにも、その仕事量が影響するという状況となってきました。

小売業バイヤーは何故そんなに忙しくなったのか?
「実際にバイヤーに聞いてみた!」

ここで、数年前ですがバイヤーをしている友人に、仕事量を把握するために、日々の仕事の内容をヒアリングし、インタビューしたときの内容を以下に記載します。

商談日には1日に5社~8社も商談をし、話題や時流に乗り遅れないために多くの専門誌の講読やテレビ視聴。

社内では多くの会議に報告会・・。

そのための商品・顧客分析から販売分析の上、会議資料や報告書の作成。挙句の果てに会議資料作成のためのミーティング。店舗へ行っては、売場・在庫のチェック、棚替え、売場への指導。

それどころか現場の手伝いまで・・。手伝いしながらでないと邪魔感たっぷりに担当者やチーフに無視され、話も聞いてくれないらしいです(苦笑)

 

そして、本部へ戻れば、発注内容の確認や全店の売上チェック、その問題分析に商品クレーム対応、チラシ商品の選定や原稿の作成、季節商品の入替え・企画、催事の企画。

そして、メールボックスを開けば、店舗やベンダー・メーカーからのメールが山のように届いており、いい加減にして欲しい迷惑メールも、うじゃうじゃ混じる・・。

 

電話も頻繁に携帯に直接かかってきて、仕事が進まないどころじゃない。だから、メールの返信どころか、メールをまともに見ることすら中々できないらしい。

そりゃ机の上に資料や見てない郵便物やカタログが山積みになり、整理整頓なんかできるわけないと愚痴っておりました。

それでも、取引先やメーカー視察、同業他社の視察にはちょくちょく行くと言ってました。「現実から逃げ、会社にいたくないだけだろ!」とつっこんでやりましたが(^^)

 

まぁ~こんなにマルチで仕事をこなして(こなせてない?)、よく頭が混乱しないなぁ~と思いました。
何かこんな内容を書くと、完全にイケてないバイヤーくんになってしまったので、友人がどこの誰だかは話せませんね(笑)

しかしこのようにバイヤー仕事は多忙になりすぎているため、「ブラック企業」とか「やめとめ」とか言われているのでしょうか?

小売業バイヤーの利益なき多忙の正体とは?
「本末転倒のスパイラルへ足を踏み入れた」

忙しいという字は、”心”を”亡くす”と書きますが、前述の状態は、まさに心を亡くす仕事の内容と量です。

 

そもそも、時代とともに増えていく仕事を、どんどん自分の仕事の中に足し算(追加)するだけで、引き算(削除・削減)しないから忙しくなるのは当然です。誰が考えたって、新しい仕事や会議、報告書を増やしたら、今までの仕事を減らさなければ増大することは分かるはずです。しかし、なぜか減らそうとしない・・。

 

その結果どうなるかというと、一つひとつの仕事がいい加減になるか、おざなりになります。典型的な例が商談。バイヤーの仕事の元祖である商品開発というよりも、価格交渉や荒利補償中心の商談。

とにかく売上を上げたい荒利を確保したいという思いなのは分かりますが、できる限り安く仕入れたいがために、適量ではなく規模の拡大に走り、調達力と価格のみで競争力をつけ、そしてそのリスクに対しては返品や値引き、リベート、欠品補償といった補てんを求めるといった具合に、本来のお客様への価値の提供はおざなりに・・。

 

そして、その結果生まれるのは何でしょうか?

お客様に価値を生まないコストの増大です。

そう、取引間両社どころか、流通全体で生まれる販管費の増大です。そんなことをして荒利をいくら確保しても、販管費が上がれば流通各社の荒利は維持できても利益は落ちるのです。そしてその落ちた利益はそれこそ補てんしなければならないため、結果として他の商品や新商品の単価に乗ることになります。

 

この荒利を追うばかりに、お客様無視で陥ってしまう本末転倒のスパイラルこそが、バイヤーの利益なき多忙の正体であると私は思っています。

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小売業バイヤーの利益なき多忙の正体とは?
「お客様の価値に目を向ければ、好循環になる」

そんな自己中心的な利益確保の発想や、自分がやりたいやりたくない、責任を取りたくない等の判断で仕事をしている場合でしょうか?

目の前のノルマや数字、波風を立てない等を優先するがあまり、後々結局苦しい結果になることに早く気づくべきです。

 

お客様の価値を見ないから、お客様が出してくださる目の前を通るチャンスにすら気づかなくなるのです。売上・荒利確保ではなく、お客様価値の創造を最重要の仕事と考えて、そこを軸とすればチャンスを見逃すことなく、無駄なことにも気づくことができます。

 

例えば、前述したように商談の場で、何度も何度も価格交渉をすることや、持ち帰って上司と相談します的なことは何を意味するのでしょう?今の時代には合わない、他の業界では段々見かけなくなった光景であり、小売業においても、SPA業態ではあり得ない光景です。

 

私は部門によっては、商談そのものをゼロにすることも可能であると考えています。

ゼロにできない部門でも、現在そして今後のネット環境やカメラ技術、Web会議、ワークフローやポータルの利用により、徹底的に商談を効率化することができます。

 

様々な効率化を進め、空いた時間をお客様価値に向ければ、全てが好循環になると考えます。

そしてそれを実現できる唯一の方法と言えるものが、現在、そしてこれからの5Gをはじめとする通信技術であり、ITの進化であると思います。

時代に合った小売業バイヤーの働き方とは?
「異常を改善するには、まず正常を知る」

ここまで分析してきたように、現在のバイヤーの仕事は異常な状態であると私は思います。

その異常状態を知るにも、それを改善するにも、まずは必ず”正常”を知らないと話にならないと私はいつも思っています。

 

例えば、チェーンが外れて動かなくなった自転車でも、正常な状態を知らなければ、チェーンが外れてるのにもかかわらず、一生懸命タイヤを見たり、ハンドルを見たり、的外れなことをしてしまいます。

笑うかもしれませんが、世の中にはこのように正常を知らずに的外れなことで異常を改善しようとしている人は結構います。

(腰が痛いって、体の正常な状態も知らずに、痛みの部分を叩いたり、揉んだりとかも典型です。悪化する可能性の方が高いです・・)

 

自転車のどういう姿が正常であるかを知っているからこそ、チェーンが外れてることに気づき、そこを正常な状態に戻すことで修理することができるのです。

 

よって、バイヤーの仕事においても、目先の判断で本質から目をそらし、あれを止めよう、こうしようではなく、まずは正常な状態がどこなのかを知る必要があるのです。

時代に合った小売業バイヤーの働き方とは?
「バイヤーの仕事の正常とは?」

では、バイヤーの仕事の正常な状態とは何でしょうか?

もちろん、この答えに正解はありませんし、企業毎に違います。
ここでは、私の一意見として持論を書かせていただくと・・

答えは「今の時代に合ったバイヤー本来の仕事をしていること」です。

 

時代に合ったとは、ザックリ以下の通りです・・

 ・ものが売れた時代   … 並べる(商品調達力、集荷力)
 ・ものが余った時代   … 売る(売れ筋商品の発見力)
 ・ものが売れない時代  … 買っていただく(商談力、提案力で売り切る力)

では現代は・・?

 ・買うところを選ぶ時代 … 選んでいただく(創造力と価値提供力)

 

バイヤー本来の仕事、正常な状態とは・・

”売る”はあくまで手段であり、企業としての目的は”利益の向上”であると考えます。そして、その目的を果たすための本質は、お客様価値追求と提供により ”選ばれる売り場づくり”をすることではないでしょうか。

 

そして、お客様価値とは、お客様に満足や感動を与えることであり、

  • お客様が欲する商品設定(品揃え、品質、量)
  • お客様が納得する価格設定
  • お客様が満足・感動するサービスの提供

 

です。

これらを実現するために必要なことは、お客様に価値を生まない無駄な仕事は全て排除し、納得価格の提供と利益の向上を実現すること。

 

そして、売上・荒利確保という発想ではなく、お客様価値(満足・感動)創造による、利益向上という発想で仕事をしていくことが、今の時代に合ったバイヤー本来の仕事であり、正常な状態であると思います。つまり、バイヤーの本来の仕事は、お客様が納得できるお客様価値を創造する仕事であり、安く仕入れて安く売り、荒利を確保するという仕事ではないということです。

 

売れないから値段を下げる、その補償としてメーカーやベンダーに荒利補てんを求める。いわゆるリベートや値引きです。

では、それを負担するメーカーやベンダーはどこに補てんを求めるのでしょうか?ハッキリ言ってどこにも求められません。

かと言って値上げも簡単にはできないでしょう。ということは、それらの負担は、別の商品や新商品に跳ね返るということになります。

 

この最終消費者であるお客様に何の価値も生まない、補償作業に関わる商談や伝票処理等の時間やお金を負担しているのはいったい誰でしょうか?企業でしょうか?

いや結局のところ最終消費者であるお客様です。

いったい何をしてるんだろう? ふと思ってしまいます。

 

もし、メーカーやベンダーの存在が無く、自分1社だけで商品の製造から販売までするならば、荒利の補償やリベートなどといったことは脳裏に浮かばず、必ずお客様価値を考えるはずです。

まだまだベンダーやメーカーに甘えることはできると思いますが、そこから抜け出し、お客様価値を創造することへのシフトがバイヤーの働き方改革への第一歩であると考えます。

 

仕事にかけるエネルギーのシフト方向は、お客様に満足や感動を与え、選ばれる売り場づくり、店づくりであると思います。

売上はあくまで手段であり、目的は荒利ではなく利益の確保です。そして、それを実現する本質は、お客様への価値(満足・感動)の提供であると確信しています。

小売業バイヤーの働き方改革に絶対必要なもの
「あるべき姿を描き、仮説を立てる」

現在新型コロナウイルスの感染問題が懸念される中、4月7日に国内史上初の「緊急事態宣言」が出されました。

そのような状態の中、「働き方改革」という内容は少しズレている気もしますし、新型コロナウイルスにより、アフターコロナでは「働き方改革」という言葉は、ひょっとしたら消える言葉かもしれません。

 

おそらく、新型コロナウイルスの収束後も、社会は元に戻るのではなく、人々の生活スタイルもビジネススタイルも、働き方も大きく変化すると私は予想します。

なぜなら、人々の生活は自粛自粛で大きく制限され、ビジネスにおいても現在対面営業は自粛とされ、テレワーク・リモートワークと呼ばれる場所や時間を選ばないスタイルでビジネスが展開され、この予想もしなかった環境の変化により、様々な価値観の気づきが予想されるからです。

 

例えば(義理人情や膝を突き合わせる商談の必要性を決して否定する気はありませんが)、リモートワークによる商談の生産性の高さや効率の良さ、これで十分できる!という価値に今回のことで多くの企業が気づき、ビジネススタイルの変化のきっかけに十分なりうるといったことです。

今回の”小売業バイヤーの働き方改革”は、テーマ的には現状に即してないかもしれませんが、本質的にはアフターコロナにも繋がる内容でもあると思っております。

なぜかというと、小売業として”選ばれる売り場づくり””お客様価値を創造する”ことは普遍的なテーマであるからです。

 

前半では、異常を改善するには、まず正常を知ることがポイントであることを書かせていただきました。

仕事をするうえで、正常な状態を知らなければ、どこが異常な箇所なのか特定もできないからです。多くの仕事においても、この法則は当てはまります。

 

目標達成における仕事では、ここでいう”正常”を”あるべき姿”に置き換えれば分かりやすいでしょう。

実は、多くの人は、この ”あるべき姿” を描がき、その ”仮説” を立てずに仕事をしてしまっています。

例えば、選ばれる売り場づくりと私は繰り返し言っていますが、選ばれる売り場のあるべき姿ってなんでしょうか?  

 

お客様が・・

  •  欲しいものが見つかる品揃え

  •  安心安全な品質
  •  納得いくお値打ち価格
  •  気持ちのいい接客
  •  感動的なサービス

抽象度は高いですが、まずはこんなところでしょう。

 

そんなの当たり前だとみなさん思うでしょうが、この各々の項目に対して、具体的な”仮説”が、何でもいい、間違ってもいいから立てられているか?ということが問題なんです。

実は、この仮説を立てずに抽象度の高いまま仕事をしている人がとても多いのです。では、抽象度の高いまま仕事を始めると何が起こるか?迷走とムダ、そして結果がでない・・ という現象が待っています。

 

例えば、抽象度が高いと起こす行動の典型は、ベンダーに漠然と聞くことと、ググることです。選ばれる店の成功事例をベンダーに聞いたり、自分でググったりして探し始めます。

これは、安易に答えだけ(本人的には正解)を探しているにすぎません。しかも、そんなに簡単に答えなんて落ちているわけはありません。

だから迷走が始まります。あちこちのベンダーに聞き、あれこれをググり、ググり始めると、そこからまた違う情報を見始め、永遠にGoogleで調べている・・

 

これは地図もなしに、自分が今どこにいるかも分からず、漠然と南の島へ向かおうとしているようなものです。

だから、やがて迷子になってしまいます。それでも情報だけをやたら仕入れてしまうため、行動もしていないのに、知識が入ると人はついついしゃべりたくなるため、その仕入れた知識を人に話すというムダも発生しはじめます。聞く方もそんな薄っぺらな情報はハッキリ言って迷惑です(苦笑)。

 

そして、言わなくても分かると思いますが、行動もなく、そんな薄っぺらな情報だけで、結果や成果が出るわけがないのです。そして仮説がなければ検証もできないので、成長もしないというわけです。

小売業バイヤーの働き方改革に絶対必要なもの
「成果を出す企業には理念に基づく仮説がある」

抽象度が高い状態で、簡単に答えだけを仮に探しあてたとしても、小手先のモノマネでは、ほとんどの場合うまくいきません。

なぜなら、成功企業の出す結果の奥には、必ずあるべき姿に向かう具体的な仮説があり、その土台として理念があるからです。

 

この”理念”があるからこそ、あるべき姿が明確になり、そこへ向かう具体的な”仮説”ができ、それに対する”思考”が生まれ、そのもとで知恵と工夫で”行動”がおき、それを続けることで他社に追随を許さない”経験スキル”が蓄積され、やっと”成果”という結果につながるのです。

 

それを考えれば、成果・正解だけを求める小手先のモノマネでは、なぜ結果が出ないか?が分かるのではないでしょうか。

 

この構造を俯瞰せず、理解せずに、結果が出ない可能性が極めて高い行動に対して、安易に答えだけを探そうと、エネルギーを注いでいる人が実に多いのです。

それで「忙しい忙しい」と頑張ってますアピールをし、ムダに調べたことを、行動もしていないのに人に自慢げに話している・・ 弱肉強食の過酷な競争社会に入った小売業にあって、そんなことを今していると取り残されてしまいます・・

 

 

このように、働き方の改革において絶対的に必要なのは、正常 = あるべき姿 → 仮説 という、具体的な目的地への地図や羅針盤を持つことであると思います。

現時点の自らの場所を自覚し、目的地への明確な地図を持てば、迷子にはならず、目的地に着くのがとても早くなるのと同様に、仕事の成果や結果も出ると思います。

小売業バイヤーの非効率的な仕事の正体は?
「仕事の精度を高めることがベース」

最初に書いたように、バイヤーの仕事は多種多様で多すぎると私は感じています。それどころか、実態として本来やるべき仕事ではないことに奔走し、今日やろうと思ったことが終業時間間際になっても「何もできていない」という状態。家に持ち帰ってやっている人も多くいます。

そんなことしてたら、よい結果どころか、体を壊してしまいます。では、なぜそうなってしまうのでしょうか?

 

それは、非効率的な仕事をしていることに気づいていないことが原因であると私は感じています。手戻りや重複作業の多さも傍から見てて半端ないです・・

小売業の多くの仕事が、上流工程ではなく、最終工程に近いところでダメだしチェックにかかります。例えば、売り場づくりや棚替え、チラシの校正等、ほぼほぼ出来上がってからのダメだし、やり直しを言われることが多いのではないでしょうか。仕事が進めば進むほど、その手戻りは痛恨であり非効率です。

 

これらは、過去から当たり前になっている小売業の習慣とも言えますが・・(目で見ないと分からない)多くの他の業種では、この手戻りを少なくする工夫をかなりしていますし、既に完成されています。

小売業バイヤーの非効率的な仕事の正体は?
「手戻りの原因は段取りが組めないこと」

この痛恨の手戻りが多いのは、通常の職場でも、仕事の効率が悪い・仕事ができない人の典型です。では、なぜ手戻りが多いのでしょうか?

原因は単純明快で、”段取りが組めてない” ということです。いわゆる仕事の段取り・アウトラインを作らずに仕事をしているということです。

 

例えば、売り場づくりや棚替え、チラシの校正などでも、単純に上流工程の段階で人に相談したり、上司にアドバイスをもらったり、作成したものをレビューしてもらいフィードバックをもらえば、手戻りは大幅に減ります。それを仕事の段取りとして最初にアウトライン形成して、その通りに進めるだけです。

目先の時間を優先していると、忙しくてできないという声が聞こえてきそうですが、全体で見たら明らかに効率的です。

 

では、なぜこんな単純なことができず、手戻りが多いのか?それは、前半から書いているように、バイヤーの仕事の種類と量の多さが原因であり、マルチタスクで仕事をこなすことによる、余裕のなさと全体俯瞰の目が持てないことだと思います。

これを例えるなら、夏休みの宿題をギリギリでやっているような状態。期限に追い込まれることで、アドレナリンが大量に放出され、ものすごいスピードであれこれ仕事をこなし、一見仕事が出来そうに見えますが、明らかに間違いやミスも起きやすく、いい加減になるため、かえって非効率でクオリティも低いです。

 

人間の脳って結構おバカなので、そもそも一つのことしか考えられません。

だから全部同時に進めようとすると効率が間違いなく下がります。

マルチタスクで仕事をするとしても、ゴールから逆算して、時間がかかるところから手を付けていく等の工夫をしてアウトラインを作成し、集中して一つの仕事を片付けるという方法は基本です。

 

例えば、一流の料理人は同時に全ての料理を最適な状態で最終的に同時提供しますが、どのタイミングで何をすればいいかのアウトラインを完成から逆算して作業にかかります。だから一番よい状態で料理が完成する。これと同じことであり、マルチタスクの仕事の基本中の基本です。

 

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小売業バイヤーの効率的な働き方と方向性とは?
「仕事を分類して断捨離してみる」

では、段取りができたあと、さらに効率的な働き方を次は考えてみましょう。

時代とともにどんどん増えていく仕事に対して、減らすことをしていない!と書きましたが、増えたら減らさなきゃ忙しくなるのは当たり前です。

例えば、仕事を以下の3つに分類し、断捨離をすると明らかに仕事のスピードと品質が上がります。ぜひ試してみてください。

① やらなくてはならない仕事

やった方がいい仕事

③ やらなくていい仕事

上記の3つに仕事を分類するのは時間もかかり、改革も大変かもしれないですが、③のやらなくていい仕事はいつも多忙なのだから完全排除し、②のやった方がいい仕事を、本質に基づいて取捨選択のうえ低減できれば、多くの時間と余裕ができることは間違いありません。

 

例えば、上司に「見やすい!」と褒められるために作る拘った資料作成への没頭や、長年続けているワンパターンの単なる連絡するだけの報告会、やたら長い無駄の多い会議・・ それら今の時代に合わない、本質から目をそらした仕事は、断絶しなければ、多すぎるバイヤーの仕事は、もはや回らない状況にあると思います。

小売業バイヤーの効率的な働き方と方向性とは?
「利益を生まない仕事から、利益を生む仕事にシフト」

前半でも書いたように、売上・荒利を確保しようと販管費(商談や伝票処理等の事務作業増)を無視して、結果として利益を生まない仕事に時間やパワーを割くのではなく、今の時代は、売上・荒利というよりも、利益を生む仕事にシフトすべきであると考えます。

 

例えば、在庫の適正化や、それに伴う発注方法の改善や棚の改善。そして、お客様価値を徹底的に追求し、価格、品質(商品、サービス)、品揃えの改善や創造、企業間の重複作業や無駄な商談の効率化がそれにあたると思います。

そして、これらを最小限のコストで実現し、最大限の利益を生む方法は、ITの活用以外他ならず、利益をあまり生まない仕事から、利益を生む仕事に多くの人がシフトできる唯一の方法であると思います。

 

また、日々効率を何も考えずに惰性で続けているアナログ的な作業や取引先と腹の探り合いに時間をかけるくらいなら、お客様価値を考えた商品選定や売り場づくりに根気よく取組み、時間をかけるべきです。

お客様は・・

 オーソドックスな売場に魅力を感じますか?

 一律の売価に魅力を感じますか?

 他社と差別化・独自化のない売場に魅力を感じますか?

 

といったことの重要性を理解し、行動することができれば、利益を生む方向に仕事もシフトされるでしょう。

小売業バイヤーとベンダーとの関係性改革
「いつまでもキツネとタヌキでいいの?」

いきなりですが、取引・商談における各社各人の立場・思考を考えてみましょう。

まず、売る側のベンダーは”一単品をなるべく多く高く販売したい”と考えます。
一方、買う側のバイヤーは”適量をできる限り安く買いたい”と考えます。

 

お互い企業に属するビジネスパーソンであれば、自分に課せられるミッションやノルマがありますので、これは当たり前といえば当たり前の話です。しかし、こんな考え方やスタンスでの仕事の仕方で、生き抜ける時代は終焉を迎えつつあると思います。

ではどうするか? この解決法を結論から言うと、「協調して創意工夫する」です!

 

最終消費者であるお客様を無視した、キツネとタヌキ的関係をいつまでも続けず、いい加減お互いがお客様のために知恵をしぼり、工夫をし、力を合わせるべきだということです。

そうすれば、間違いなくよい結果に結びつくと思います。

 

決して企業間の戦いではなく、お客様価値に応えるための仲間にならなくてはならないと思います。

売る側と買う側が自分の成績のために腹の探り合いをするのではなく、お客様価値のために知恵をしぼり工夫をする、お互いがそのフォロワーになることが今の時代の市場環境に適した正常な状態ではないでしょうか。

小売業バイヤーとベンダーとの関係性改革
「これまでの商談の常識を疑ってみる」

仕事にかけるエネルギーを戦い(キツネとタヌキ)にシフトしている限り、バイヤー側もベンダー側も本音は、ハッキリ言って商談の中では出ないでしょう。

以前の良き時代では、飲みながらの夜の商談で本音で腹を割って話すこともあったでしょうが、今はそんなこともできない時代です。本音で語れない商談なんて時間の無駄だと思いますが・・ 違うでしょうか?

 

例えば、私は量販店小売業における、ドライ・グロサリー関連の商談は、試食等を除けばWeb商談でほとんどできると考えています。当社の製品の「 商談.net 」もそれを実現する商品となっています。

何度も何度も価格交渉をすることや、持ち帰って上司と相談します的なことは排除し、現在のネット環境やカメラ技術、Web会議、ワークフローやポータルの利用により、徹底的に商談を効率化して、その分をお客様価値に向け、利益につなげようという考え方をしています。

はっきり言って、毎度毎度同じ商談をしているのは本当に無駄だと思います。同じ商談をしなくていい方法を考え、工夫してみるべきです。方法はいくらでもあると思います。

商談に限らず、これまでやってきた仕事の”普通”や”当たり前”や”常識”を疑ってかかってみてはいかがでしょうか?

そうすることで、働き方改革への道がパッと開けると思います。

小売業バイヤーの働き方改革 ~まとめ~

小売業において圧勝をしている業態があります。周知の通り、荒利約50%、利益率約15%程度を叩きだすSPA業態です。

自社1社だけで、商品の製造から販売までをするため、消費者にとってのムダが大きく抑えられることが、選ばれる店の本質であり、良い決算書の要因です。自社1社でやっているためサプライチェーンの構築がしやすく、リベート計算や伝票のやり取り等の消費者にとってのムダも発生しません。

 

まして、腹の探り合いをするようなキツネとタヌキの商談もありません。アフターコロナではビジネス環境が変わり、リモートワークの手法を大手も中小小売業も採用し、キツネとタヌキ的商談は、きっと激減すると予想します。

小売業におけるビジネス環境も、例外なく弱肉強食の世界です。

 

現在は新型コロナの感染拡大により、多くの制限を受けておりますが、政府も今回の緊急事態制限により、悪い影響を受ける方や事業主・企業に対して、一生懸命支援をしてくれようと努力しています。本当の弱肉強食であったら、このような支援も一切ないはずであり、そのことを思えば、本当にありがたいことです。

だから日本は、この逆境を乗り越え、克服すると思います。

 

緊急事態宣言の今やるべきことと、アフターコロナのビジネス環境やビジネススタイルは違うとは思いますが、時代や環境の変化に合った、時流に乗った店が選ばれることは言うまでもないと思います。このピンチをチャンスに変え、今こそ、これまでの常識や習慣を疑い、アフターコロナを見据えた準備を考えてみてはいかがでしょうか。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。