【小売業向け】アプリで加速する顧客販促CRMの最前線

【小売業向け】アプリで加速する顧客販促CRMの最前線

流通小売業に携わる方やマーケティングを学ばれた皆さんは、CRMというワードをご存知だと思います。

そう、Customer Relationship Management(カスタマーリレーションシップマネジメント)です。最近はあまり耳にしなくなった言葉ではありますが、顧客管理の王道です。

 

CRMは、30年ほど前にマーケティング先進国アメリカから導入された考え方です。

Frequent Shoppers Program(FSP)や、One to One Marketingなどの概念、RFM分析、デシル分析などの言葉が日本でも流行り始めた頃と同時期で、むしろそういったものを包含する上位概念ととらえられています。

当時は、流通小売業各社(特に百貨店)がハウスカード戦略やコールセンターなどの顧客接点を整備し始めた時期。筆者もいくつかの大型量販店様でポイントカード戦略の立案や会員組織運営のお手伝いをしました。

 

CRMとは、顧客との良好な関係構築を自社の経営やマーケティングの主軸におき、競合に対して競争優位を築くための考え方であり手法です。

このCRMは、小売業に留まらないあらゆる業種で、その後の顧客管理システムや、ひいては今日のブランド戦略につながる考え方となりました。

 

グローバルでネット化やシステム化が進行している現在においては、CRMという単語を使わなくとも、自社の顧客セグメントや打ち手に活用されている小売業様も多いのではないでしょうか。

しかし、現実は、当時語られていた理想のCRMをすでに実現済みだ、という実感をお持ちの企業は少ないのではないかと思います。

顧客情報を販促に生かしたい、変わらぬ小売業の思い

CRMは、流通小売業界では、どちらといえばポイントカードの導入、顧客管理ソフトやシステム、それが派生したID-POSなど、システムベンダーが提供する顧客情報を集める仕組み・システムにばかり偏っていて、本当の意味で実践できている企業は、ごく一部の企業であるように感じます。

最近でも、販促アプリの導入企業様から「できるだけ多くの個人情報を集めたい」とのご要望をよく伺います。30年前もいまも、小売業は「顧客情報」を集めたい。

その思いに変わりはないようです。

 

その用途は、「顧客情報と買い上げデータを紐づけて、どのような客層に、どのような商品が売れているのかを把握し、そのお客様にアップセルやクロスセルの提案をしたい」「来店客がどの地域から多く来られていて、どの地域からは少ないのかを把握し、チラシの打ち方を見直したい」 と、こちらも30年前とほとんど変わりません。

小売業が顧客データを収集することを否定はしません。

 

デジタル技術が進化した現代、自社・自店の顧客情報を素早く収集・分析し、各政策への効率的な予算配分、重点顧客へのサービス向上に努めることは必須課題と言えるでしょう。

しかし、顧客情報を集め分析することと同じぐらい、その用途についても時間を割いてお考えいただいた方が良いと思います。

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販促にとどまらない本来のCRM

目下のところ、CRMの運用実践面においては、ポイントやクーポンなどの、いわゆるFSPが主流です。

累積購入金額や来店・購入頻度の高い顧客をなるべく優遇し、自店の顧客に“つなぎとめておく”定石です。そうです。

間違ってはならないのは、FSPはあくまで顧客の“離反を防ぐ”ための販促であり、顧客満足を引き上げるための手法ではないということです。

多くの食品スーパー、ドラッグストアチェーンがポイントカードを発行しています。また食品スーパーのアプリ上でも、時に「毎週●曜日は、ポイント5倍デー」などと顧客の来店・購入を誘います。

 

しかし、これは再来店とご購入を促すものであって、優良顧客の満足を引き上げるものにはなってはいません。

特売品だけを目当てに週に2~3度来店しお買い物をされる会員と、毎日お買い物をしていただき、月間で累積数万円のお買い物をして頂く会員とでは、ポイント還元率を通して“平等”に扱われてはいますが、決して“公平”ではないということを、いま一度確認する必要があるでしょう。

 

本来は、同じコミュニケーションであってはいけません。業種の垣根を越えて厳しい競争が展開される中、あるべきCRMとは、自社・自店の強みを明確にして、その強みを“新たな顧客への価値” として再構築し、商品や店づくり、サービスで具体的に形にし、自社・自店の優良顧客に向けて集中的に提示することです。

英国テスコが実践してきたこと、と言えば、ご理解が早い方もいらっしゃるでしょう。

優良顧客の発見から育成へ

では、流通小売業でのCRMの現状と向かうべき方向とは?トレンドを鑑み、以下のような図1にしてみました。

(図1)流通小売業のCRM戦略

 

国内の流通小売業のほとんどは、CRMのレベルが、まだ、「ステージ1. 優良顧客の発見」にとどまっていると思われます。「安いから」「近いから」「ポイントが貯まるから」という動機をお持ちのお客様に対して“平等に”接している状態ですね。

その中でも自社カードの利用データから来店頻度や累積購入金額の高いお客様を峻別し、その顧客像や購入パターンを明らかにする段階です。例えば、自店の利益の源泉である優良顧客は、年間累積購入金額が▲▲万円以上で、精肉部門、特に牛肉の買い上げ頻度が多く、しかも赤ワインの同時購入が比較的多い、などが顧客像です。

 

そして、明らかになったことに対して打ち手を行い、一般客を優良顧客に、優良顧客を超優良顧客に引き上げていくステージが、「ステージ2. 優良顧客の育成」です。

牛肉の品揃えに各地から取り寄せるブランド牛肉を週替わりで加えていく、赤ワインのラインロビングを拡大し、売り場にテイストを細かく紹介するバイヤー手書きのPOPを用意する、エンドにおすすめワインのコーナーを作り、パブリックスペースでワイン講習会などのイベントを実施するなど、商品・売り場・売り方・コミュニケーションに落とし込んでいきます。

 

このような取り組みをされている小売業は、食品スーパーであれば、都市部のハイクラスのスーパーや、高い支持を集める地方の中堅スーパーに見られます。

全国展開チェーンになると、ほとんどが実質的に仕入れ先に協賛を要請する“ポイント還元”にとどまり、優良顧客向けの品揃え政策、販売政策(企画)まで展開を落とし込めている企業は、いまだ少ないと言えるでしょう。

顧客販促CRMは、優良顧客との“共創”へ

これからは、「ステージ3.優良顧客との共創」に取り組まれる小売業が増えてくると思われます。

このステージでの優良顧客に対する接し方は、自社・自店の商品政策・店舗運営政策・販売促進政策に、店外スタッフとして積極的に関与・参加していただくということです。

 

このように書くと、とてもハードルが高いように思われるかもしれませんが、いまでも総菜部門の新しい商品、弁当などを試作段階で商圏の主婦に味見をしてもらって意見を聞く、などの動きをされているスーパーマーケットは少なくありません。

他にも、「店長直行便」などと称して、来店客から意見を募集している小売業はたくさんありますし、自社の公式サイトでお問い合わせを受け付けている小売業も数多くあります。

 

顧客から貰える情報にはとても有益なものが多く、しかも、そのお店に強い思い入れ(ロイヤリティ)のある優良顧客のお客様ほど協力的です。

彼らはむしろちょっとした報償よりも「自分が贔屓にしている店が、より良くなろうとしている!それについて自分が協力できている」ことに満足します。

このような優良顧客を丁寧にマネジメントするには、相応の技量とノウハウが必要ですが。

アプリで、小売業の顧客販促CRMは加速する

私たちは、今後、この「優良顧客との共創」のCRMに、スマートフォンというデバイスが大きな役割を果たすと考えています。

従来、小売業の顧客とのコミュニケーションは、折込みチラシやDMなど一方通行のものでしたが、スマートフォンには双方向性、速報性、そしてコンテンツの多様性という強みがあります。

 

このように考えると、CRMの実践ツールとして、スマートフォンに勝るデバイスは現時点ではほかに見当たりません。

スマートフォンの保有率はすでに70%を超えており、国民1人1台の時代を迎えようとしています。

 

いますぐ「優良顧客との共創」のCRMをスタートできる環境にあります。では、どうやって実践するのか?

例えば、募集系で参画を促すなら、小売業アプリのアンケート機能を使って次のようなことができます。

 

・“当店イチ推し商品”を募集  例)あなたのイチ推しスイーツはどれ?

・自社開発商品のメニュー活用法を募集  例)オリジナル薩摩地鶏の美味しい食べ方は?

・地域情報の収集(地域催事、競合店情報など) 例)自治会、子供会のXmasイベントはいつ?

・暮らしのアイデア募集(我が家の自慢の料理、収納アイデアなど) 例)我が家のみそ汁の具ランキング

 

アプリのアンケート機能を使えば、優良顧客のお知恵を拝借することで、自店の魅力、オリジナル性を高めることが可能でしょう。

 

ほかに、紙で運用していたアンケートや、「店長直行便」をアプリに置き換えると、次のようなことができます。

・店内施設・店舗環境・サービスの定期的な評価・改善提案

・買い回りしやすい売場レイアウトの再編アドバイス

・品揃えについての改善提案(お店においていない、欲しい商品)

 

紙をアプリに置き換えると、このような改善が簡単にできるでしょう。

アプリで購入デメリットをアピールする

スーパーマーケット向けアプリで優良顧客とのコミュニケーションももっと変えていくべきでしょう。

例えば、オーケースーパーでは、「オネスト(正直)カード」という制度が顧客に高く評価されています。ご存知の方も多くいらっしゃるでしょう。

 

同社のホームページを見ると、「6月21日から発泡酒が値下げになります。お急ぎでなければ、6月21日までお待ちください」とか、「グレープフルーツ(南ア産)について。美味しいフロリダ産に比べると甘みが不足しており、若干酸味があります。蜂蜜をかけてお召し上がりください」などの例が掲載されています。

 

正直に顧客にデメリットを開示するだけでなく、だからこうしていただくと良いですよ、という具体的な提案までされています。

デメリットを開示し、結果的に顧客メリットに変換して満足度を向上させるというテクニックです。

 

 このようなコミュニケーションもスーパーマーケット向けアプリであれば、容易に来店前のお客様に即時でお届けすることができ、より効果的になります。

例えば、「天候不順により、葉物野菜のご提供価格が通常より平均1割程度高くなっております。

根菜類は値が安定しておりますので、メニューをお考えの際のご参考にしてください」というお知らせが手元のスマホに通知されると、どうでしょう?

あらかじめ心構えができるお客様に、きっと好意的に受け止めていただけると思います。

まとめ 小売業のDXは、アプリ活用によるCRMから

長くCRMはシステムやツールにばかり関心が注がれ、その実践運用は十分に行われなかったと思います。

しかし、システムやツールなどの道具立ては、いまや十分に整っています。

何より、これからは、顧客ひとりひとりがすでに手にしている情報デバイスの、アプリという最善のツールを活用してCRMを実践していくべきです。

 

個人的には、これが、いま優先的に小売業が取り組むべきDX(デジタル・トランスフォーメーション)ではないかとさえ思います。

是非、長期的視点に立って、アプリを顧客との最良の関係づくりにお役立てください。

 

本ブログを執筆したのは、名古屋に本社を置く流通業に特化したシステムベンダー「株式会社テスク」です。

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