卸売業から見たリベート ~家庭紙業界編~
リベートとは、いわずと知れた支払代金の一部を支払人にもどすことですが、その方法はさまざまです。
年間売上高に応じて割り戻す方法、店舗内における陳列場所の優劣や面積の大小に応じて割り戻す方法、決済期間の長短に応じて割り戻す方法などがあります。
卸売業から見た支払リベートにはどのような種類があるのか、業界特有のリベートにはどのようなリベートがあるのか、今回は特に家庭紙業界について解説します。
卸売業がリベートを管理する背景
トイレットペーパー、ティッシュペーパーなどの家庭紙は、大手量販店の特売対象商品になることが多く、販売単価が原価割れしてしまうことも多々あります。
このような場合、販売数量に応じてメーカーに申請・請求して補填をしてもらうため、得意先・商品別の販売数量・販売単価を管理します。
リベートはメーカーから受け取るばかりではなく、販売先(小売業)へ支払うこともあります。
施設などに卸す場合の原価は、メーカー仕入額で行います。
原価割れして販売することが多い家庭紙も、メーカーから受け取るリベートを管理することによって、小売業へ支払うリベートとして運用することができます。
《 リベートの計算 》※このリベート計算方法は、家庭紙業界特有のものです。
卸売業では、メーカーとのリベート契約をするため、次のような商談を行います。
(1) 得意先・商品別の販売単価・販売原価を決定(倉出し・直送で条件設定が可能)
(2) 商品ごとの補填粗利率、ケース出荷補償額の決定(量販店からの販売単価から、特別単価を算出)
(3) (1)(2)の計算結果のうち、安値を特別申請単価として決定
(4) 特別申請単価と仕入原価の差額をメーカーへ請求
卸売業がリベートを受け取る理由
前章にあげたように、リベートを行うために商談や契約、社内処理を実施する必要が発生します。
それでも卸売業がリベートという制度を利用しているのはなぜなのでしょうか。
(1) 仕入商品に、ある一定額の金額が売上とは別に補填されるため、収益が安定します。
(2) 最低限の収益が見込めるため、人件費やコストの管理がしやすく、計画が立てやすくなります。
(3) (1)(2)によって見込める安定した収入を活用し、他社との差別化(取扱い商品の増大、販売チャネル拡大の検討など)に力をいれ、売上・粗利の向上を目指すことができます。
卸売業にとって、リベートを導入する最大のメリットは、商談や契約で設定された条件をクリアすると、必ずリベートが支払われるため、最低ラインの収入が確保でき、予算やコストの計画が立てやすくなることにあります。
卸売業から見た受け取りリベートの種類
卸売業が受け取るリベート(仕入れに対しての払い戻し)といってもさまざまな種類があります。
(参考:side bizz 「リベートとは値引きを意味する?キックバックの種類&支払う理由8選」https://www.sidebizz.net/seek/archives/3556)
(1) 累進リベート :販売額や商品の取引量に応じてメーカーなどから支払われるリベートです。販売量や販売額が増えるほどリベートの金額もあがっていくため累進リベートと言われます。
(2) 導入リベート :新商品を取り扱うとメーカーなどから支払われるリベートです。新商品を取り扱うことにより割安の商品・サービスが提供されます。
(3) 専売度リベート :自社製品を専売してくれた場合にメーカーなどから支払われるリベートです。 店頭などで自社製品を中心的に販売してくれた場合などに支払いが行われます。
(4) ロイヤリティリベート :自社の販売方針に従って、販売をしてくれる流通業者(卸売業者)に対して支払われるリベートです。メーカーなどの販売方針に従って販売することでより多くのリベートが支払われます。
(5) 家庭紙業界特有のリベート
a) 車引(しゃびき) :メーカーからの運送条件に応じて決まります。
仕入金額×車引率で計算します。条件には、次のような条件があります。
納品日に対して |
車載量 |
単品/混載 |
4日前発注 |
11トントラック |
単品 |
4日前発注 |
11トントラック |
混載 |
3日前発注 |
11トントラック |
単品 |
3日前発注 |
11トントラック |
混載 |
2日前発注 |
11トントラック |
単品 |
2日前発注 |
11トントラック |
混載 |
3日前発注 |
4トントラック |
単品 |
3日前発注 |
4トントラック |
混載 |
「かさ」が張り軽量な家庭紙(トイレットペーパー・ティッシュペーパーなど)は、低単価であるため、売り上げに対する物流費の比率が高くなりがちです。
また、ドライバーによる手積み手卸を行っているため、入荷車両が長時間待機となり、ドライバーも長時間拘束され負荷も大きいです。
そのため、車両積載効率が良いほど車載率が高く設定される、家庭紙業界独特のリベートです。
b) EDIインセンティブ :EDIシステムを使用し、EDI 取引量に応じて支払われるリベートです。
小売業~卸売業間で行われている『課金システム』によく似ています。
卸売業からメーカーへ発注データの送信を行うことで、メーカー側はデータ入力作業が軽減されるため、事務効率向上につながります。作業軽減分に対する補填となります。
小売業~卸売業間で行われる『課金システム』は、「基本料金」+「データ量」を算出して「相殺」として支払相殺しますが、EDIインセンティブは、「仕入値引き」として支払相殺します。
【まとめ】卸売業から見たリベート ~家庭紙業界編~
今回ご紹介した家庭紙業界においては前述の通り、軽量であるが、「かさ」が張るうえ単価が低い傾向にあり、売り上げに占める物流費も相対的に高くなっていることから「車引」といった特殊なリベートもあることをご紹介させていただきました。
家庭紙業界の中小メーカーではドライバー自身で商品の積み卸し作業をしていることも多いため、ドライバーへの身体的負荷も大きく、荷待ち時間の発生にともなって、拘束時間の長時間化にもつながっています。
大手メーカーでは家庭紙の製品ケースサイズを考慮した共通パレットを開発して、ドライバーの荷役負担を軽減したり、商品の積み卸し時間を短縮したりすることによって物流の効率化に取り組んでいただいています。
リードタイムを長くしたり、同じ商品を多く積載するようにしたりして発注することによって、車両積載効率の高い納品条件に対してメーカーからのリベートがあるのも、こういった家庭紙業界特有の背景からきています。
同じリベートといえども業界が異なれば、その業界特有の考え方が必要になってきます。
株式会社テスクは、創業以来、流通業に特化し、消費財向け販売管理システムの導入支援・運用支援に携わってきました。長年つちかってきた経験と実績によって、豊富なノウハウを持っています。
今回ご紹介した家庭紙業界のリベートについても、開発・導入している実績がございます。
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